雑草の戦略とビジネス「雑草という戦略 稲垣栄洋」

2022年4月23日

雑草が過酷な環境に適応する姿にビジネス戦略を見出す

「雑草という戦略 稲垣栄洋」この本は、厳しい逆境、自然界に生きる雑草の生存戦略に、厳しい現代社会での生き残り戦略を見出す、生物学と経済学を横断する知的興奮を味わえる、ビジネス本です。

よく抱くのは、雑草は踏まれても踏まれても負けずに立ち上がる、というイメージかもしれません。むしろ逆だそうです。踏まれるならもう立ち上がらずにその状態で適応しようとするのだそうです。

雑草がなぜ除草され、駆除されても生き残っているのかがここにあります。彼らは無理をせず、一番重要な目的、繁殖に焦点を当てて、それだけに最適化された生存戦略をとっているからです。

たとえばオオバコという植物はあえて人間に踏まれることで増えていきます。オオバコの種子にはゼリー状の物質があって、人間の靴や自動車のタイヤにくっついて移動し、増えていきます。むしろ踏まれたがっているのですね。

また、草刈り機は雑草にとっては強敵となるでしょう。イネ科の植物は生長点が低く、馬などの草食動物に食べられても、生長点が低いので、上の部分が食べられてもまた成長していきます。同様に芝生は生長点が低いので刈られるとむしろ元気になります。刈り取られると光が届きやすくなるからです。

このように、本書にはさまざまな逆境を生き抜いてきた雑草たちが紹介され、時にそれが経済戦略として重ね合わせると、会社経営の生き残り戦略、サラリーマンの処世術のようなものに応用できる気がして、妙な興奮を覚えます。

学問を横断的に俯瞰することで得られる発見と知的興奮

学問はこのように複数領域を横断するとあらたな発見があるのかもしれません。知の領域の横断。これは知的興奮をそそられますし、そして、雑草たちのたくましさに、ある種の哲学的啓発を受けることでしょう。面白い本です。